旅3日目、AM10:05、朝のサティは混んでいた。
タイムサービス1本29円のニンジンをしっかり握りしめたありけんは、レジ前の行列の中にいた。
【荷物は3つ】
ギター、バック、晴志さんへのお土産のとんこつラーメン。
このラーメン、ホテルなどで何度もありけんに食べられてしまいそうになるが、
なんとか危機をくぐり抜けて金沢までたどり着くのである。
米子から『鳥取ライナー』で鳥取までひとっ飛び。
バスの揺れに癒されながら、20分程で砂丘へと降り立った。
いたー!!
いたよ、ラクダー!
しかし、ラクダは監視の人にしっかりとガートされていた。
民間会社が経営するそこの立て看板には、ラクダの写真を撮るだけで100円、一緒に並んで撮るのに500円、乗って1800円と記されていた。
くそ〜、インチキラクダ商法め、ラクダはみんなのものだろう(そんなことはない)。
ラクダに乗りたい人たちの行列から見ても、簡単には近づける状況ではなかった。
これじゃ超大物プロデューサーの取り巻きをくぐり抜け「聞いて下さーい!」とデモテープを渡すより難しいじゃないか。
しかし、ラクダにニンジンを食べさせるために企画され、ここまでやってきたのだ。
世界中の人達が期待している。
絶対に引き下がれないありけんは、1800円払ってラクダに乗って、係の人が綱を引いている隙にニンジンを与えようと考えた。
ニンジンを握りしめた手をカバンの中に突っ込み、ラクダに近づくありけん。
砂漠に張りつめる緊張。
そしていよいよ。
食べたー!!
ウソです。
ごめんなさい!!無理でした。
ラクダは一人乗り用と二人乗り用があって、一人乗りのラクダは口に口輪(マスクみたいなもの)がつけられていたのだ。(写真は、晴志さん宅の愛犬『ポップ』)
【働くラクダ】
ほら、口輪がされているでしょ。
ラクダは仕事をしていた。
人を乗せて、ちょっと歩いては降ろし、また人を乗せて、、ずっと。
ラクダも楽じゃない。
口輪がしてあってはもうお手上げである。
ありけんの関心は、さっきからどーんと見えている巨大な砂山の方へ100%向けられた。
砂山の中でも一番急で、一番登りにくそうな場所を選んで登り始める。
足の裏が暑い。
もうだめ、、
【写真10 No,6『in鳥取』】
ありけんは砂浜に『取鳥』(字が逆)と書いてしまっていて、
それを見たカップルに笑われてしまった。(情けない、、)
彼女が書いているのは『in鳥取』、ちゃんと合ってます。
気持よさのあまり、海で犬のように走り回り、捲ってあるズボンもずぶ濡れなありけんは、波打ち際で一人海を見つめている女の人を発見した。
砂丘、波打ち際、風にたなびく髪を手で押さえる美女。
パチンコでいうと777(スリーセブン)、フィーバーである。
彼女は照れながらも快くモデルを引き受けてくれた。
お礼に彼女のカメラでも彼女の写真を撮ってあげた。
なんかね、、
楽しかった。
このとき初めて『写真10』企画をやっててよかったと思ったのだった。
【ありがとう!元気で!】
しかしこの彼女、1時間程後にまた別の場所でばったりありけんと出会ってしまう。
大阪かから来た大学3年生の彼女は、厳しい就職活動を前に、初めて一人旅を決心したのだった。
青春18切符で、鳥取(砂丘)、島根(水木しげるの鬼太郎ロード)、山口(秋芳洞の鍾乳洞)、広島(原爆記念館)を回る5日間の旅の記念すべき1日目だという。
はぁ、もう、いい話じゃないか。
平成生まれの彼女が、原爆記念館に行くと言っているのである。
それなのに、そんな記念すべき第一日目に出会ってしまったのがありけんだった。
旅のアドバイスを求めてくる彼女に対し、ここは人生の先輩として、旅人として、なにか役立つアドバイスをしてあげようと話を始めたありけん。
わざわざ東京から、ラクダがニンジンを食べるかどうか確かめるために来た。
昨日は、1日3本の列車をのり損ねて大変だった。
一昨日は、島根に行くはずが香川にいた。
今日はこの後、北に向かって適当に行けるとこまで進む。
えっ?荷物?
荷物はね、あっちの松林のとこに隠しとうよ。
えっ?盗難?
大丈夫!大丈夫!
『持っていかないで下さい』って紙に書いて貼ってあるから。
しかし、おれって、、適当だなぁ。
話ながら自分自身つくづくそう思えてきた。
ありけんはおもしろおかしく話しているつもりなのだが、彼女はまるでメモをとるような顔で真剣に聞いているので笑い話にらないのである。
きっと今まで生きてきた彼女のキャパをゆうに越えていたのだろう。
大したアドバイスもできず『頑張りーね!』と別れて、今度は砂丘とは別の海岸に出る遊歩道を歩き始めた。
なんだか少々落ち込んでしまったありけん(バカ)。
フライヤでも渡しておけばよかったと後悔するのであった。
【砂丘よりずっと北の浜辺】
波の荒いきれいな日本海を見ていて思い出した。
学生の頃、コンテストの出演でバンドメンバーやスタッフと共に石川県に行った時、車を借りてみんなで海へ行ったのだ。
その海はまさにこんな感じ、緑がかっていてきれいだった。
海に入ったり、砂浜に車がハマってみんなで押したり。
バンドの終わり方がひどかっただけに、よい想い出とは思わなかったのだが、、。
だけど浮かんでくるのは、みんな暖かい場面ばかり。
人は憎むものではなく、愛すべきものやね。
【駅は終わり】
45分の待ち時間。
ギターはかなりの荷物となるが、こんな時はすごく助かる。
鳥取駅で5分の違いで電車を乗り損ない、3時間遅れとなり北上する山陰本線。
砂丘を登る時にバックをドカドカやってしまったからだろうか、ヘッドホンが壊れていて音楽も聴けなくなってしまい、ますますブルーになる。
夜の列車は、景色が見えないので暇である。
読みかけの本もつまらず、そうなると眠りに入るしかないのである。
【写真10 No,7『ちょっぴり怪しいお坊さん』】
夜は冷える。
荷物の関係でさんざん迷ったあげく、長袖を置いて来たことを後悔。
Tシャツを二枚重ねて着、半袖もボタンをとめている。
ローカル線の旅をなめてかかったやつは凍え死ぬしかないのだ!
(写真はタイマー撮影)
兵庫県の豊岡駅で乗り合わせた、タイから奈良に向かう途中というお坊さんの旅話を聞く。
野宿、断食は当たり前。
なんかね、人生もすごい。
半日食べないで、ガイコツになる〜とか言っていた自分が情けない。
奈良のお坊さん達に説教(喝を入れに)しに行くそうだ。
ほんとかいな(笑)。
一恷(いっきゅう)さん、無事をお祈りしてます!
お坊さんの話を聞いて活気を取り戻したありけん。
ガラガラ列車は、すごいスピードで北上を続ける。
京都の福知山のホテルにチェックインしたのは0時過ぎ。
しかし、今日はいろいろあった。
さあ、早く寝ないと明日は晴志さんとライブだ。
うおー、旅パワーのすごい勢いで何でも歌える気がするぞ。
…そういえば練習してないな。
ホテルの目覚ましは壊れていたので、携帯電話の目覚ましをセットしてすぐさま眠りにつく。
しかし明日、まさかその携帯電話を落としてしまおうとは、、
夢にも出てこなかった。
その5へ続く